◆ はじめに
お金を借りられる際には、当然、しっかりと返済していこう、返済していけるだろうと思って、借りられていると思います。
しかし、返済の途中で事情が変わってしまった(収入の減少など)等の理由で、借金を滞納後そのまま放置して現在にいたってしまったという場合に、
・その借金を処理できるなら今のうちにすっきりさせておきたい。
・滞納後放置していた借金の督促や通知が今になって、債権者や債権回収会社を名乗る業者からきた。
・裁判所から訴状や支払い督促などの書類が来た。
・延滞利息や損害金が多額になっている。
というような方は、以下にご説明する借金の消滅時効の援用手続きを検討してみるべきです。
注意すべきことは、消滅時効の援用は、しっかりと手続きをしておかないと、最悪の場合、財産や給料を差し押さえられることも考えられます。
さらには、滞納という状態が続いている限り、基本的にJICCなどの信用情報機関の保有するあなたの信用情報に事故情報が記載され続けます(ブラックリスト)。事故情報が記載されている限り、将来、自動車ローンや住宅ローンを組もうと思っても難しくなってしまいます。
ぜひ、お早めにご相談下さい。
◆ 借金の消滅時効について
借金の消滅時効とは
借金の消滅時効とは、時効期間の経過により、借金が消滅するという法律上の効果を言います。
つまり、債権者(貸主)は借金の請求ができなくなり、債務者(借主)は、借金を返済しなくてもよくなります。
ただ、時効期間の経過により自動的に借金消滅の効果が生じるわけではなく、借主が貸主等に対して通知をする必要があります。これを「消滅時効の援用」と言います。
一般的には、配達証明付き内容証明郵便で通知します。
時効期間はどのくらいなのか
時効期間は、民法では原則として10年、商法では商行為によって生じた債権については、5年となっております。(改正民法施行前)
具体例
消費者金融等貸金業者の場合
業者が会社である場合又は、借主が商人で営業のために借り入れをした場合は、5年となります。
銀行の場合
5年となります。
信用金庫の場合
10年となります。ただし、借主が商人で営業のために借り入れをした場合は、5年となります。
日本学生支援機構(奨学金)の場合
10年となります。
時効期間の起算点
時効期間はいつから始まるのかというと、原則として弁済日の翌日から時効期間が始まることとなります。
つまり、弁済日の翌日から5年または10年経過すれば、その借金は時効となります。
キャッシングのリボ払いや、ショッピングの分割弁済、奨学金の返済などの分割弁済の場合は、各分割弁済金の弁済日の翌日からそれぞれ時効期間が始まります。
ただし、消費者金融等貸金業者やカード会社の場合は、まず間違いなく期限の利益の喪失約款というものが契約書に記載されており、この場合は滞納後2~3か月経過した日から借金全額につき時効期間が始まることになると思われます。
保証会社がついている場合(銀行からの借り入れなど)については、保証会社が貸主に対し、借主の代わりに借金を弁済したとき(代位弁済日)から時効期間が始まります。
改正民法施行日(2020年(令和2年)4月1日)以後の法律行為に基づき生じた借金の場合
時効期間は、①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、又は②権利を行使することができる時から10年間、となっております。
借金の場合は、弁済期が定められていることが通常ですから、商行為か否かにかかわらず、①の5年間となります。
◆ 時効期間がリセットされてしまう場合
時効の中断(更新)(時効期間経過前)
時効期間が経過する前に、以下のような事由があると、時効期間がリセットされ、またそこから5年または10年経過しなければならなくなります。
・裁判上の請求
訴訟や支払い督促などがこれに当たります。取り下げられた場合等は時効は中断(更新)しません(ただし、裁判等の手続きが終了したときから6ヶ月間は時効は完成しません(時効の完成猶予))。
また、裁判上の請求により、判決等が確定した場合は、時効期間は リセットされ、さらに時効期間がもともと5年であった場合でも、時効期間は10年に延長されます。
・差し押さえ等
住宅ローンなどを滞納して、債権者より競売を申し立てられた場合、財産開示手続きを申し立てられた場合が当たります。取り下げられた場合等の効果については、上記裁判上の請求と同様です。
仮差押・仮処分については、時効は中断(更新)されませんが、手続きが終了した後、6ヶ月間は時効が完成しません。(時効の完成猶予)
・債務の承認
借金があることを認めることが、これに当たります。
返済をすること(一部・少額でも)はもちろん、支払いの猶予を申し入れたり、返済の約束をしたり、 和解書を作成したり、というようなことをすると時効が中断(更新)し、またその時から5年または10年経過しないと時効の援用はできません。
ですので、返済を続けている方は時効になることはありません。
・催告(支払いの催促)
借金の支払いを求める債権者からの通知(催告)は、それがあった時から6ヶ月間は時効の完成が猶予されます。
しかし、催告後6か月以内に訴訟や支払い督促等の手続きをしなければ時効は中断(更新)しません。
注意しなければならないのは、催告後6か月以内に訴訟や支払い督促等の手続きをすれば、たとえ、訴訟や支払い督促等の手続きの時点で時効期間を経過していても、時効は中断(更新)されてしまうという点です。(催告自体は時効期間経過前である必要があります)
通常は、証拠を残すため、配達証明付き内容証明郵便で催告されることが多いと思われます。
時効を援用する権利を失う場合(時効期間経過後)
時効期間が経過した場合でも、以下のようなことをしてしまうと、援用する権利を失い、時効期間はリセットされ、それからまた5年または10年経過しないと時効を援用できません。
・債務の承認(時効の中断(更新)の場合と同じです)
借金があることを認めることが、これに当たります。
返済をすること(一部・少額でも)はもちろん、支払いの猶予を申し入れたり、返済の約束をしたり、 支払いに関する話を債権者としたり、和解をしてしまった場合は時効を援用できなくなる可能性があります。そうすると、再び時効期間が経過するまで待たなければ時効を援用することはできません。
・判決が確定した場合
時効期間経過後であっても、債権者から借金の返済を求める訴訟を起こすことは可能です。
その訴訟に対して何も対応しなかったり、時効の援用を主張しなかったりすれば、借金を支払うよう命令する判決が出てしまいます。
その判決が確定すれば、時効が援用できなくなり、さらには時効期間は、もともと5年であったとしても10年に延長されてしまいます。
なお、支払い督促の場合には、2週間以内に異議を裁判所に提出せず、支払い督促が認められてしまうと、財産を差し押さえられてしまうこともあり、早急な対応が必要です。
◆ 債権者から督促の通知、訴状、支払い督促が届いた場合
債権者等からの督促の通知
「ご連絡」や「催告書」など、債権者によってさまざまなタイトルで借金の支払いを求める書面が届きます。中には、法的手続きをにおわすものや、逆に一部損害金を免除するといったような記載のものもあります。
その書面の中の記載で、「期限の利益喪失日」「約定返済日」「返済期日」などが5年以上前の日付であれば、時効を援用できる可能性があります。
なお、保証会社からの通知の場合は、「求償権を取得した日」など代位弁済をした日付から5年以上経過していれば、時効を援用できる可能性があります。
ただし、過去に時効期間がリセットされてしまうようなことがあれば(時効の中断など)、5年以上経過していても、援用できないこともあります。
注意すべきなのは、書面が届いたからといって、安易に債権者等に連絡をしてしまわないことです。少額でも支払ってしまったり、支払いに関する話をしてしまったりすると、 時効を援用する権利を失ってしまう可能性があります。
このような書面が来た場合はお早めにご相談ください。
債権者等からの督促の通知
上記同様、「期限の利益喪失日」や「求償権をし得した日」などの日付が5年以上前であれば、時効を援用できる可能性があります。
ただし、過去に時効期間がリセットされてしまうようなことがあれば(時効の中断など)、5年以上経過していても、援用できないこともあります。
注意すべきなのは、そのまま放っておくと、時効期間がリセットされたり、財産を差し押さえられたりしてしまうということです。
訴状や支払い督促など裁判所から書類が届いた場合は、早急にご相談ください。
※ 借金が他の会社に譲渡されていたり、債権回収会社が回収業務を担当していたり、債権者の会社名が変更されていたりする場合もあるので、知らない会社からの通知だと思ってそのままにせず、必ずご相談ください。
◆ 消滅時効の援用手続きの方法
まずは、専門家にご相談することからはじめます。
ご相談の際には、債権者からの督促の書類、訴状、支払い督促などをご持参ください。
書類やご相談内容により、時効期間が経過していると思われる場合は、司法書士が代理人として、債権者に対し消滅時効の援用手続きを致します(訴訟や支払い督促への対応を含みます)。
※ 債権の特定が不十分な場合においては、受任通知を債権者に送付する場合もございます。
万が一、時効中断手続き等を取られており、時効期間が経過していなかった場合は、他の債務整理手続き(任意整理・自己破産手続き・個人民事再生手続き等)による解決をサポートいたします。
◆ 借金の消滅時効援用手続きの費用
ご相談・お見積もり
無 料
司法書士報酬
4万円×債権者数
その他実費
数千円~
※ その他実費は、郵送代などです。
※ 司法書士報酬は税抜きです
◆ 債権者、債権回収会社の例
債権回収会社
ニッテレ債権回収株式会社/アビリオ債権回収株式会社/パルティール債権回収株式会社/オリンポス債権回収株式会社/ティー・オー・エム株式会社/アイ・アール債権回収株式会社/エー・シー・エス債権管理回収株式会社/日立キャピタル債権回収株式会社
債権者
アイフル/アコム/SMBCコンシューマーファイナンス/新生フィナンシャル/武富士/ラックスキャピタル/クリバース/アペンタクル/メザニンファンド/CFJ/ギルド/トライト/クレディア/シンキ/アットローン/セディナ/オリエントコーポレーション/三菱UFJニコス
◆ Q&A(消滅時効援用手続き)
- 借金の消滅時効の援用手続きにより、信用情報はどうなりますか?
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借金の消滅時効の援用手続きをすると、JICCなどの信用情報機関に記載されている信用情報は完済扱いとなり、時効を援用したとの情報も載ることはありません。
援用手続きから5年程度経過すれば、情報自体が消えることとなります。※ 債権譲渡などで、借金が他の会社に譲渡されると、JICCなどの信用情報機関の情報が消えていることがあります。 ただし、この場合は、情報が消えていても借金がなくなったわけではありませんので注意が必要です。
- 司法書士の代理権の範囲について教えてください。
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借金の消滅時効援用手続きを行うにあたり、司法書士が代理人となることができるのは、紛争の目的の価額が140万円以内のものに限られます。
価額は、債権者ごとに判断いたします。なので、借金の総額が140万円を超えていても、1社あたりの借金額(元金)が140万円以内であれば、司法書士に借金の消滅時効援用手続きを依頼していただくことが可能です。
また、価額は原則として債権者が主張する金額が基準となります。